オフビートカウントの正しい発音
オフビートカウントとは
オフビートカウントとは、英語の数字をカウントしながら即興演奏、又は何等かの楽曲の演奏を行う際に、8分音符1〜2つ分早く数えることによって、リズム、特にグルーヴに対する理解を深める実践法です。
問題は日本人がグルーヴを認識出来ないことでした。私達日本人は、グルーヴを感じることが出来ないばかりか、そこにグルーヴがあるかないかすらも認識することすら出来ません ─── しかしグルーヴは空気のように見えない存在ではありません。譜面に書き起こすことではっきりとその形を観察することができる物体の配置なのです。
グルーヴとは英語の発音=ストレス拍リズムと深い関係がある概念で、その起源はシェークスピアの詩吟の世界にまで遡り、英語の音韻学的原理と深い関係を持っています。問題は、音韻学的に見てストレス拍リズムと真逆の特徴を持っている日本語のモーラ拍リズムを母国語とする人々が、このグルーヴの世界を全く理解できないという問題でした。
オフビートカウントは、どうやったら日本人がグルーヴを理解することが出来るかを音韻学的に分析した結果として生まれました。
オフビートカウントの意図
オフビートカウントは、通常のカウントにリズムのなかのグルーヴしたリズムの有無をカウント上で認識しやすくする為の工夫を加えたものです。
リズムには グルーヴの四原則 で説明した次の四つの原則が存在します。
- 強拍先行 か 弱拍先行
- 頭合わせ か 尻合わせ
- 強拍基軸 か 弱拍基軸
- 2⁻ⁿリズム か 3⁻ⁿリズム
このなかで 1. 強拍先行 / 弱拍先行 及び、2. 頭合わせ か 尻合わせ の2つを認識しやすくするために、ずらしとみなしという読み方を加えたものが、オフビートカウントです。
『ずらし読み』と『みなし読み』
みなし読みとは
ずらし読みもみなし読みも弱起を適切に認識する為の方法です。
例えば以下のように八拍数えるとします。
この時、グルーヴの四原則のうちの1つ強拍先行の存在を加味して考えると、4分音分1つが先行する弱起を踏まえて読む必要があります。 すると次のようになるでしょう。
これは次のように8が先に来ているとみなして読んでいるといえます。
- みなし移動量0 | 1 2 3 4 5 6 7 8 | 1
- みなし移動量1 8 | 1 2 3 4 5 6 7 8 |
このように先に来ているとみなして読むことをみなし読みと呼びます。
ずらし読みとは
みなし読みは、弱起が先行する感覚を掴んでいない人にはとても難しい読み方といえます。そこで、数字を一定量だけずらすことで、強制的に弱起が先行する感覚をつけるという方法が考え出されました。
この時、グルーヴの四原則のうちの1つ強拍先行の存在を加味して考えると、4分音分1つが先行する弱起をずらすことで表現してみましょう。 すると次のようになるでしょう。
- ずらし移動量0 | 1 2 3 4 5 6 7 8 | 1
- ずらし移動量1 1 | 2 3 4 5 6 7 8 1 |
このようにずらして読むことをずらし読みと呼びます。
使い方
今後たくさんのカウントパターンが表れます。これらを状況に応じて「ずらし読み」と「みなし読み」の両方を組み合わせて、グルーヴを理解しやすい形に変更して、それを読み上げる練習を行います。
日本人が聴き取れない6つの音韻規則=リズム認識型
何故日本人は英語が理解できないのでしょうか。それは英語が聴き取れないからです。では何故日本人は英語が聴き取れないのでしょうか。 ───それは勉強が不足しているからではありません。どんなに文法の知識が十分でも、どんなに単語の知識が十分でも、英語を聴き取ることはできません。 モーラ拍リズムが、ストレス拍言語に特有な6つの音韻規則を持っていない事が原因しています。
その6つの音韻規則とは以下の通りです。
音節核の等時性 頭子音最大化原則 核音節の等時性 頭音節最大化原則 韻律的核音節の等時性 韻律的頭音節最大化原則
ここでは、これをモーラ拍の6つの欠落音韻規則と呼びます。
つまり英単語の知識がなくても、英文法の知識がなくても、このモーラ拍の6つの欠落音韻規則 を体得していれば、少なくとも意味がわからないまま英語を聴き取ることが出来るようになります。英語が聴き取ることができれば、そこから単語の意味を推測したり、文脈を追いかけることで文法を推測したりすることが出来るようになります。
ではどうやったらその6つの発音規則モーラ拍の6つの欠落音韻規則を習得することが出来るようになるでしょうか。その答えが オフビートカウント です。
音韻規則の3つのレベルについて
これらの6つの音韻規則は3つのレベルに分けられます。
これを音韻規則の3つのレベルと呼びます。
- レベル1 … 音素レベル
→ シラブル拍リズム、及びストレス拍で有効になる音韻規則
→ 音楽のリズム上で 3⁻¹=1/3リズム に相当する音節核の等時性 頭子音最大化原則
- レベル2 … 音節レベル
→ ストレス拍リズムで有効になる音韻規則
→ 音楽のリズム上で 3⁻²=1/9リズム に相当する核音節の等時性 頭音節最大化原則
- レベル3 … 韻律レベル
言語上では起こらず音楽上でのみで有効になる音韻規則
音楽のリズム上で 3⁻³=1/27リズム に相当する韻律的核音節の等時性 韻律的頭音節最大化原則
音素レベル 音節レベル 韻律レベル この3つのレベルは、後にカウントの次元数を決めるパラメータとなります。
オフビートカウントで使う数字・記号・アルファベット
オフビートカウント法は、米国で一般的なカウント法にずれをつけて読むという変更を加えたものです。ずれをつける量のことをここではオフセットと呼びます。オフセットとは、例えば4分音符1つに数を割り当てて読む場合、通常なら1234と読むところをオフビートカウントでは 2341 と読みます。この場合のオフセットは1/4(=4分音符1つ)です。オフビートカウントの具体的な例については後述します。
つまりオフセット量が0のオフビートカウントは、米国で一般的なカウント方法と同じです。オフセットがあるかないかという違いはあっても、基本的にカウントする方法自体は米国で一般的なカウント方法と全く同じものです。
以下でカウントの基礎を説明致します。
字句一覧
米国で一般的なカウント方法とはどのようなものでしょうか。それは英語での数字及び、&、E、Aの3つの記号とアルファベットを使って数えるものです。
- 数字
- 0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20
- 記号
- & ( and )
- アルファベット
- E (イー)
- A (アー)
このカウント方法は特定の誰かが行っているものではなく、米国で広く一般的に実践されているものです。次のビデオが参考になります。クリス・コールマンがカウントの実演をしている場面のビデオです。
この米国で一般的なカウント方法は、数字と簡単な単語と記号を使って数えるだけの作業ですが、ストレス拍リズム/シラブル拍リズムで重要な発音規則
がむしゃらにシャドウイングを行っても、ほとんどの場合で
しかしカウント練習では、発音練習に必要な単語を最小限にとどめることにより、ストレス拍リズム・シラブル拍リズムのリズム構造を集中して練習することが可能になります。
そしてオフセットをつけたオフビートカウントを練習することにより、ストレス拍リズムに特有な
字句のIPA表記一覧
オフビートカウントを行う時に必要となる単語の発音は以下の通りです。 覚えるべき単語数はとても少ないですが、これらが組み合わさると様々な発音変化が起こります。ここで起こる発音変化を徹底的に学ぶことで
| 記号 | 英語表記 | IPA | メモ |
|---|---|---|---|
| 0 | zero | /ˈzɪəɹoʊ/ 又は /ˈziːɹoʊ/ | also /ˈziɹoʊ/ (“zee-ro”) |
| 1 | one | /wʌn/ | ʌ as in “cup” |
| 2 | two | /tuː/ | long /uː/ as in “boot” |
| 3 | three | /θɹiː/ | initial /θ/ (voiceless “th”) |
| 4 | four | /fɔɹ/ 又は /foʊɹ/ | /ɔɹ/ as in “for” |
| 5 | five | /faɪv/ | diphthong /aɪ/ |
| 6 | six | /sɪks/ | short /ɪ/ |
| 7 | seven | /ˈsɛvən/ | first syllable stressed |
| 8 | eight | /eɪt/ | diphthong /eɪ/ |
| 9 | nine | /naɪn/ | diphthong /aɪ/ |
| 10 | ten | /tɛn/ | short /ɛ/ |
| 11 | eleven | /ɪˈlɛvən/ | stress on second syllable |
| 12 | twelve | /twɛlv/ | dark /l/ |
| 13 | thirteen | /ˌθɝˈtiːn/ | secondary stress on first |
| 14 | fourteen | /ˌfɔɹˈtiːn/ | secondary stress on first |
| 15 | fifteen | /ˌfɪfˈtiːn/ | note /fɪf/, not /faɪv/ |
| 16 | sixteen | /ˌsɪkˈstiːn/ | stress shift pattern same |
| 17 | seventeen | /ˌsɛvənˈtiːn/ | schwa in 2nd syllable |
| 18 | eighteen | /ˌeɪˈtiːn/ | may reduce to [ˈeɪtin] |
| 19 | nineteen | /ˌnaɪnˈtiːn/ | sometimes [ˈnaɪntin] |
| 20 | twenty | /ˈtwɛnti/ | /t/ may flap → [ˈtwɛnɾi] |
| & | and | /ænd/ | 弱化時/ən/ 又は /n̩/ |
| e | e | /iː/ | 弱化時/i/ ) |
| a | a | /eɪ/ | 弱化時/ə/(シュワ), /əː/ 又は /ʌ/ |
声門閉鎖音(ʔ)について
声門閉鎖音は標準日本語が持たない発音のひとつですが、日本語以外では子音として使われることが多い発音でもあります。
声門閉鎖音は標準的な英語ではしばしば使われますが、さほど多くはありません。英語の方言では多用されます。
特にジャズのスキャットやラップなど、音楽の上で発音される英語では特に多用され、リズムを表現する為の重要な発音のひとつといえます。
カウント パターンとは
リズム中の多次元構造を表現する為に、この 0~20 及び &,e,a の文字を並べることでことで様々な並びの羅列が出来上がります。この組み合わせのことをカウントパターン と呼びます。
- カウントパターンの例
- 1,2,3,4,2,2,3,4
- 1,&,2,&,3,&,4,&,2,&,2,&,3,&,4,&
- 1,e,&,a,2,e,&,a,3,e,&,a,4,e,&,a,
- …
音韻表記厳密化とは何か
英語を母国語とする人々は、特別な訓練をしない状態でもこの1拍1単語を割り当てる表記方法から自然にグルーヴするリズム解釈を抽出することができます。何故なら英語の発音にはストレス拍リズムと呼ばれるグルーヴの元となるリズムルールが存在するからです。このことから英語を母国語とする人々は、グルーヴを演奏する為に必要なリズム認識型を全て持っている場合が多いと考えられています。
しかし英語を母国語としない人たち ─── 特に日本語を母国語とする人たちは、1拍1音を割り当てる表記方法から正しくグルーヴするリズムを抽出することができません。それは日本語の発音の背後にはモーラ拍リズムと呼ばれるグルーヴとは逆の要素を持ったリズムルールが存在するからです。このことから日本語を母国語とする人々は、グルーヴ抽出する作業に必要な全てのリズム認識型を持たないと考えられています。これが モーラ拍の6つの欠落音韻規則 です。
学習者が元から持っているリズム認識型によらずにこの問題に対処する為に、ここでは英語を母国語とする人々話者が無意識のうちに行っている音符として表記しない発音の配置を、敢えて音符の割り当てとして厳密に表記するという手法を利用します。
この手法をここでは音韻表記厳密化と呼びます。
音韻表記厳密化の7つのレベル
音韻表記厳密化 には7つのレベルがあります。これは音韻表記厳密化の深度を7つのリズム認識型を元に7つのレベルに分けることで導き出したものです。
- 音韻表記厳密化レベル
- レベル0:
頭子音最小化原則 - レベル1:
音節核の等時性 - レベル2:
頭子音最大化原則 - レベル3:
核音節の等時性 - レベル4:
頭音節最大化原則 - レベル5:
韻律的核音節の等時性 - レベル6:
韻律的頭音節最大化原則
- レベル0:
これら7つのリズム認識型を考慮した上で譜割りに反映します。
| 音韻厳密化LV | 最適化する要素 | 音韻規則LV | 必要なサブディヴィジョンLV |
|---|---|---|---|
| 0 | 0 | 3⁻¹=1/3 | |
| 1 | 1 | 3⁻¹=1/3 | |
| 2 | 1 | 3⁻¹=1/3 | |
| 3 | 2 | 3⁻²=1/9 | |
| 4 | 2 | 3⁻²=1/9 | |
| 5 | 3 | 3⁻³=1/27 | |
| 6 | 3 | 3⁻³=1/27 |
音韻表記厳密化レベルによって必要となる音韻規則レベル
7つの音韻表記厳密化にはそれぞれ、必要となる音韻規則レベルが異なることに注意して下さい。この音韻規則レベルによって、必要なサブディヴィジョン数が決まります。
- 音韻規則レベル1 音素レベル = 3⁻¹=1/3
- 音韻規則レベル2 音節レベル = 3⁻²=1/9
- 音韻規則レベル3 韻律レベル = 3⁻³=1/27
音韻表記厳密化の感覚理論逆行性 について
8分音符オフビートカウントと3連符オフビートカウントを比べると8分音符オフビートカウントの方がずっと理論的な理解が簡単です。しかし実際に練習してみると、8分音符オフビートはとても感覚的に理解しづらく、3連符オフビートカウントの方がずっと感覚的な理解が簡単ということを経験します。同様にして、3連符より9連符、9連符より27連符の方が感覚的な理解が簡単ということを経験します。
しかし理論的な理解という視点から、8分音符オフビートカウントと3連符オフビートカウントを比べると、3連符オフビートカウントの方がずっと理論的な理解が困難です。同様にして、3連符より9連符、9連符より27連符の方が感覚的な理解が困難です。
このようにオフビートカウントに於いて、理論的な理解の容易さと感覚的な理解の容易さは反比例します。このことを
3つの基本カウントパターンについて
これらの音韻規則レベルが要求するサブディヴィジョン数を踏まえた上でカウントパターンを定義したものを譜面として表すと次のようになります。これを基本カウントパターンと呼びます。 基本カウントパターンは、現在のところ全部で3種類あります。
なお、これらの譜面は音韻厳密化を行う前の譜面であることに注意して下さい。1音節に3音素ある為、音符1つに対して1音節を割り当てると、その音符は3分割されます。以下の譜面は、3分割される前の表記になっています。つまり必要なサブディヴィジョンが3ならばそれは4分音符1つとして表記されます。
このことを次の音韻表記厳密化の節で見ていきます。
音韻規則レベル1=音素レベル
サブディヴィジョンレベル = 3⁻¹=1/3
音韻規則レベル2=音節レベル
サブディヴィジョンレベル = 3⁻²=1/9
これは1ディヴィジョンに3つのサブディヴィジョンを割り当てる数え方です。
音韻規則レベル3=韻律レベル
サブディヴィジョンレベル = 3⁻³=1/27
これは1ディヴィジョンに27つのサブディヴィジョンを割り当てる数え方です。
これは一瞥では理解が難しいですが、次のような法則になっています。
- 1 & A & & A A & A
- 2 & A & & A A & A
- 3 & A & & A A & A
これは一瞥では理解が難しいですが 1 & A を先頭の文字を変えながら3回繰り返して読んでいるのです。それを数字だけで表現すると次のようになります。
- 1 2 3 2 2 3 3 2 3
- 2 2 3 2 2 3 3 2 3
- 3 2 3 2 2 3 3 2 3
この時、1 を 1、2を&、3をa に割り当てて同じ様に読むと
- 1 & A & & A A & A
- 2 & A & & A A & A
- 3 & A & & A A & A
になります。この様に数字を多層にして読む必要があるリズムをここでは多次元グルーヴと呼びます。 詳しくは多次元ディヴィジョン空間理論を参照して下さい。
次のグラフは、1拍を1テーブルとして表し、横書き(列を先に左から右に読み、行を次に上から下に読む)で表したものです。
| 1 | & | a |
| & | & | a |
| a | & | a |
| 2 | & | a |
| & | & | a |
| a | & | a |
| 3 | & | a |
| & | & | a |
| a | & | a |
| 4 | & | a |
| & | & | a |
| a | & | a |
| 5 | & | a |
| & | & | a |
| a | & | a |
| 6 | & | a |
| & | & | a |
| a | & | a |
| 7 | & | a |
| & | & | a |
| a | & | a |
| 8 | & | a |
| & | & | a |
| a | & | a |
| 9 | & | a |
| & | & | a |
| a | & | a |
| 1 | & | a |
| & | & | a |
| a | & | a |
これを数字だけで表すと次のようになります。
| 1 | 2 | 3 |
| 2 | 2 | 3 |
| 3 | 2 | 3 |
| 2 | 2 | 3 |
| 2 | 2 | 3 |
| 3 | 2 | 3 |
| 3 | 2 | 3 |
| 2 | 2 | 3 |
| 3 | 2 | 3 |
| 4 | 2 | 3 |
| 2 | 2 | 3 |
| 3 | 2 | 3 |
| 5 | 2 | 3 |
| 2 | 2 | 3 |
| 3 | 2 | 3 |
| 6 | 2 | 3 |
| 2 | 2 | 3 |
| 3 | 2 | 3 |
| 7 | 2 | 3 |
| 2 | 2 | 3 |
| 3 | 2 | 3 |
| 8 | 2 | 3 |
| 2 | 2 | 3 |
| 3 | 2 | 3 |
| 9 | 2 | 3 |
| 2 | 2 | 3 |
| 3 | 2 | 3 |
| 1 | 2 | 3 |
| 2 | 2 | 3 |
| 3 | 2 | 3 |
テーブルを読む順番は次の通りです。
それぞれのテーブル内の数字を読む順番は次の通りです。
| 1 | 2 | 3 |
| 4 | 5 | 6 |
| 7 | 8 | 9 |
| 2 | 2 | 3 |
| 4 | 5 | 6 |
| 7 | 8 | 9 |
| 3 | 2 | 3 |
| 4 | 5 | 6 |
| 7 | 8 | 9 |
| 4 | 2 | 3 |
| 4 | 5 | 6 |
| 7 | 8 | 9 |
| 5 | 2 | 3 |
| 4 | 5 | 6 |
| 7 | 8 | 9 |
| 6 | 2 | 3 |
| 4 | 5 | 6 |
| 7 | 8 | 9 |
| 7 | 2 | 3 |
| 4 | 5 | 6 |
| 7 | 8 | 9 |
| 8 | 2 | 3 |
| 4 | 5 | 6 |
| 7 | 8 | 9 |
| 9 | 2 | 3 |
| 4 | 5 | 6 |
| 7 | 8 | 9 |
| 9 | 2 | 3 |
| 4 | 5 | 6 |
| 7 | 8 | 9 |
| 1 | 2 | 3 |
| 4 | 5 | 6 |
| 7 | 8 | 9 |
基底3⁻ⁿに於ける音韻表記厳密化
これから実際にカウントパターンに対して実際に音韻表記厳密化を行います。これまでに御紹介致しました3つの音韻規則レベルに沿って作られたカウントに対して7つの音韻表記厳密化を順番に行います。
音韻規則レベル1=音素レベル
音韻規則レベル1のカウントを音韻表記厳密化していきます。音韻規則レベル1のカウントは音韻規則レベル1=音韻表記厳密化レベル3までの音韻表記厳密化しか行うことが出来ません。ここからレベル3までの音韻厳密化を行います。
レベル0 頭子音最小化原則
まず音符を音素に分解したのちに、単純に先頭から音韻を順番に割り当てる表記方法がこのレベル0音韻厳密化です。
この表記方法には2つの解釈が考えられます。
- 音韻厳密化がない抽象的なゼロ音韻厳密化
- 頭子音最小化原則に対する音韻厳密化
レベル0はレベル1以降で行う音韻厳密化を行いません。ここからレベル0を抽象的なゼロ音韻表記厳密化と考えることができます。 これが1つ目の解釈です。
2つ目の解釈は、このゼロ音韻表記厳密化を
モーラ拍リズムを持つ言語である日本語話者が英語・ドイツ語・ロシア語などのストレス拍リズム言語で書かれた歌詞の歌を歌おうとしたり、スペイン語フランス語ギリシャ語などのシラブル拍リズム言語で書かれた歌詞の歌を歌おうとすると、日本語のモーラ拍リズムのリズム解釈が表出することによって、リズム解釈に独特な間違いが生じます。レベル0音韻厳密化は、この日本語での間違ったリズム解釈を譜面化したものといえます。
その日本語での独特な間違いとは
海外の言語(シラブル拍リズム・ストレス拍リズム)では、音節ごとに現れる母音を拍の先頭として母音同士の間隔を一定に保つという暗黙のルールが守られます。このことを
更に海外の言語は多重子音や子音の接続を持っていることから、日本語よりも圧倒的に長い子音が現れます。長い子音が現れても母音の拍の等時性を守るためには子音を母音よりも先に言い終わっている必要があります。
このことから母音に拍を置いた上で子音を弱拍として母音よりも前に子音を発音する必要が生じます。これは弱拍の起源と言い換えることも出来ます。
しかし日本語(モーラ拍リズム)では、子音母音を含むマス目自体に等時性があります。このことを
これはそのモーラ拍内に子音がない場合に更に目立つ問題となって表出します。それはそのモーラ内に子音がない場合、次の譜面で表される様に子音が前進することです。
この譜面は、モーラ拍リズムの頭合わせリズム認識型が発動した状態を模式的に表現しているものです。Eight(8) の部分に注目して下さい。ここでは2つの問題が起きています。1つ目は、日本語などのモーラ拍リズムの言語を話す人が、母音から始まる単語で英語話者が暗黙のうちに発音する子音=声門閉鎖音を認識出来ない為に脱落が起こることです。
そして次にその脱落が起きた時、そのもともとモーラ拍内中央におかれていた母音が、脱落した子音位置を待つことなく発音されることです。このことから母音の位置が見かけ上前進した様に見えます。 このことを
この様に全ての音素がそのモーラ拍の先頭に揃う性質のことを 音素の頭合わせと呼びます。
音素の頭合わせは、日本人がグルーヴしない理由の最も根本的な理由と言えます。音程の出始めである母音の位置が変化する為に、音の発音位置が一定しなくなり、グルーヴの条件である「音が一定間隔で演奏される」が満たされなくなります。
これが日本人がグルーヴしない理由です。日本語話者の感覚での等間隔
譜面に対する忠実さの違い
このレベル0ゼロ音韻表記厳密化は、日本人が譜面に対する忠実さを最大限に守った結果としてしばしば現れます。シラブル拍リズム言語やストレス拍リズム言語を母国語とする人々が、譜面に書かれていなくとも暗黙の了解として守っているルールの存在を知らない状態で守る譜面に対する忠実さは、音楽に対する破壊行為と断じても過言ではありません。
日本人として発音の違いに対して謙虚になり、違いに興味を持ち、音韻学をよく学んで海外で一般的な譜面の解釈を学ぶことの大切さはいくら強調しても強調しすぎることはありません。
以下のレベル1以降はそういう譜面の解釈の一例を形式化したものです。貴方の志を世界中の人々に届ける為の淀みない発音を実現する為にこれらのレベルは存在します。
レベル1 音節核の等時性
モーラ拍リズムを母国語とする人が最初に直面する問題は、
この問題を解決する為に専用の練習方法が必要です。以下の譜は、シラブル拍リズムの
この様にシラブル拍リズム言語を話す人々は、子音を弱拍位置で発音する習慣を持っています。
レベル2 頭子音最大化原則
シラブル拍リズム言語は更に
次の譜は、シラブル拍リズム言語に於いて、末子音が頭子音にまとめられて発音される様子を模式的に表したものです。
拡大表示
音韻規則レベル1 音素レベル = 3⁻¹=1/3 で可能な音韻表記厳密化はレベル2までです。これ以降の音韻表記厳密化は音韻規則レベル2以上のカウント上で行う必要があります。
音韻規則レベル2=音節レベル
レベル3 音韻表記厳密化 からはこれまでの音韻規則レベル1=音素のみの厳密化だけでなく音節レベルでの音韻表記厳密化を行います。
音韻規則レベル1のカウントでは音韻表記厳密化レベル2までの音韻表記厳密化しか行うことが出来ません。音素だけでなく音節に対する厳密化を行うために弱拍基軸の階層を1つ増やした音韻レベル2のカウントを利用する必要があります。音韻表記厳密化レベル3からは音韻規則レベル2のカウントに移行した上で音韻表記厳密化レベル3及び4の音韻厳密化を行います。
音韻規則レベル2での音韻表記厳密化の基本的な考え方は次の通りです。
音韻規則レベル2のカウントパターンを見てみます。
二層カウントに対してレベル3の本来の目的である音韻表記厳密化レベル3
これでレベル3
次節からこの2階層カウントに対してレベル1とレベル2を音韻表記厳密化を行います。
レベル0 頭子音最小化原則
詳細の説明はレベル0に譲ります。
レベル1 音節核の等時性
詳細の説明はレベル1に譲ります。
レベル2 頭子音最大化原則
レベル2
レベル3 核音節の等時性
レベル3
これは譜面を見ると複雑に見えますが、この章の冒頭で御説明した通り、レベル1レベル2の音韻表記厳密化を取り除くと単に1階層目の3連符1つ分を左に移動しただけもものです。
レベル4 頭音節最大化原則
レベル4は更に弱拍先行を更に推し進めます。
レベル3で弱拍先行を実現する為、オフセット(ずれ)を付加することでカウントを早めました。
このずれをつけた状態で a を先に読むことで二重の弱拍先行(頭音節最大化)を行います。
この状態でレベル1レベル2の音韻表記厳密化を行うと次の様になります。
音韻規則レベル2で可能な音韻表記厳密化はここまでです。
音韻規則レベル3=韻律レベル
音韻規則レベル3のカウントを音韻表記厳密化していきます。音韻規則レベル1のカウントは音韻規則レベル1=音韻表記厳密化レベル3までの音韻表記厳密化しか行うことが出来ません。ここからレベル3までの音韻厳密化を行います。
レベル0 頭子音最小化原則
元となった 3⁻²=1/9 の9つの音符に音節を割り当てたことにより更に3分割され、** 3⁻³=1/27**の27つの音符に分割されたものです。
詳細の説明はレベル0に譲ります。
レベル1 音節核の等時性
詳細の説明はレベル1に譲ります。
レベル2 頭子音最大化原則
詳細の説明はレベル2に譲ります。
レベル3 核音節の等時性
これまでレベル1〜レベル2で表記法厳密化を行ったカウントパターンは次のようなものでした。
これに対して
この1つずれたカウントパターンに対してレベル1レベル2の厳密化を加えたものが最終的なレベル3の完成形となります。
詳細の説明はレベル3に譲ります。
レベル3完成形
レベル4 頭音節最大化原則
これまでレベル3で表記法厳密化を行ったカウントパターン原型は次のようなものでした。
これに対して
これがレベル4のカウントパターン原型です。この1つずれたカウントパターン原型に対してレベル1、レベル2の厳密化を加えたものが最終的なレベル4の完成形となります。
詳細の説明はレベル4に譲ります。
レベル4完成形
レベル5 韻律的核音節の等時性
これまでレベル4で表記法厳密化を行ったカウントパターン原型は次のようなものでした。
これに対して
これがレベル5のカウントパターン原型です。この1つずれたカウントパターン原型に対してレベル1、レベル2の厳密化を加えたものが最終的なレベル5の完成形となります。
レベル5完成形
レベル6 韻律的頭音節最大化原則
これまでレベル5で表記法厳密化を行ったカウントパターン原型は次のようなものでした。
これに対して
これがレベル5のカウントパターン原型です。この1つずれたカウントパターン原型に対してレベル1、レベル2の厳密化を加えたものが最終的なレベル5の完成形となります。
レベル6完成形
まとめ
音韻規則レベル1=音素レベル
原カウントパターン
レベル0
レベル1
レベル2
音韻規則レベル2=音節レベル
原カウントパターン
レベル3
レベル4
音韻規則レベル3=韻律レベル
原カウントパターン
レベル3
レベル4
レベル5
※ レベル5から 1,2,3,4 を除いた版です。
※ レベル5から 1,2,4 を除いた版です。
※ レベル5から 1,2 を除いた版です。
レベル6
※ レベル6から 1,2 を除いた版です。
※ レベル6から 1,2,4 を除いた版です。
※ レベル6から 1,2,3,4 を除いた版です。
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